LDの子は見捨てられてきた? 〜学習支援と対人スキルの関係性〜

 

発達障害者支援において、学習支援は取り扱われることは少ないです。

 ▶︎ 対人関係スキル
 ▶︎ 日常生活スキル
 ▶︎ 職業スキル

このような、生活に密着したスキルの方が重要だという認識が一般的だからです。

また、

 ▶︎ 「最低限の読み書き計算ができればよい」
 ▶︎ 「勉強なんて社会に出ても役に立たない」

そう考えて学習を重視していない方も多いですが、一方で

「学習支援が発達障害児への支援でも、もっと必要なのではないか?」

という声が最近広がり始めています。

 

今回は、そんな学習支援の話題について紹介します。

 

LDは見捨てられてきた?

 

発達障害という言葉が広まると同時に、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉症スペクトラム)の子には、支援が入るようになりました。

一方、LDの子は最近まで見捨てられてきたという歴史的な背景があります。

 

発達障害は、集団で過ごす環境において、その特性が不利に働きがちになります。

みんなで一斉に行動が必要な場面で、多動・衝動性や空気の読めない発言などがあると、周囲との関係性に溝が生まれやすいからです。

 

一方、LD(学習障害)は、学習面の困難なので他の特性の合併がなければ、特別に目立つことはありません。その一方で、多くの園や学校の先生は、ASDやADHDなど行動面で課題が目立つ子の支援に優先的に回されます。

 

その結果、優先順位が低いLDの子は、必要な支援が届いていないのが現状です。

もちろん「勉強が苦手な子」と判断して支援を入れてくれる優秀な先生もいますが、一人で30〜40人を担当する日本の教育システムでは、LDの子まで支援が回ってくる例は稀と言えます。

 

そうした状況を変えるために、多くの専門家が現在、LD支援に取り組み始めています。

 

LD(学習障害)と認知負荷

LDの子を理解する上で大事なことは「認知負荷」です。

認知負荷とは「情報処理の時に、有している能力をどのぐらい使用するのか?」という考え方です。

 

 

例えば、文章を読む時にLDのない人は「情報処理能力の20%を使用する」とします。この思考に必要なパーセントが認知負荷です。

この場合だと、残りの80%を内容読解に使用できます。

 

 

一方、「読み書きに困難」のあるLDの人は、LDのない人と比較して読むことに多くの情報処理能力を使います。

例えば、読むことに80%の力を使用すると、内容読解には20%しか使えません。

 

こうなると、内容読解に80%使える人と、20%しか使えない人では、学力に大きな差が生まれますし、学習以外の場面でも困りごとが多々出てきます。

 

このように、LD支援では認知負荷をどれだけ減らしてあげるかが重要と言われます。

読みの負担を減らせば、それだけ内容読解に情報処理能力を割けるからです。

 

ワーキングメモリとトラブルの関係性

LDの人の認知負荷は様々な能力が関係しますが、大きな要素と言われているのはワーキングメモリ(作業記憶)と呼ばれる力です。

 

ワーキングメモリは、見聞きした情報を脳に一時的に保存し、作業に活用する能力です。

この力が高いほど、脳の中に情報をたくさん保管して、作業を円滑に進めることができるので、学習・日常生活全般で活用されていると言われています。

 

近年の研究では、この認知負荷が増えてワーキングメモリの容量が減ると、アドレナリンやストレスホルモンなどが脳内に放出されて、緊張感や興奮性が高まることがわかってきました。(Guo-Lin Chen,et al.,Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet.,2012)

 

元々、人間は自然の中で生きていましたが、

「考えて理解できない状況、未知の状況」=「生命に危険が迫っている」

と考えられる状況だったと考えられます。

そのため、ワーキングメモリの容量が減っていくほど、すぐに戦闘や逃走ができるように獲得した能力と言われています。

現代では、勉強がわからなくても死ぬことはありませんが、脳と体は「危険な状況」だと判断して、戦闘モードに入ってしまうのです。

 

実際に、学校で授業を飛び出す子の多くはLDの子だと言われています。

例えば、ASDやADHDの子でも勉強ができる子であれば、授業は危険な状況にはならないので、教室を飛び出すことは多くありません。(先生との関係性が悪いなど他の原因がなければ)

 

また、勉強がわからない状態で授業に参加し続けると、

 ▶︎ 勉強から逃げるための他害行動や不登校
 ▶︎ 自己肯定感の低下に伴う学習性無力感

などの二次障害につながると言われています。

 

このように、LDの子へ学習支援をすることは、単に勉強の遅れを回復するという意味だけでなく、行動面の問題の改善にもつなげることができるのです。

 

終わりに

発達障害者支援と聞くと特別困難な子への支援で、ほとんどの人は関係ないと思われがちになります。

しかし、現在課題と言われているのは、

 

 ▶︎ 学力には問題ないのに、周囲とトラブルになってしまう
 ▶︎ 支援学校にいくほどではないが、授業についていけない

など、いわゆるグレーゾーン(境界知能)と呼ばれる子への支援が不足していることです。

 

当法人でも、発達障害やその他の困難を抱えている全ての子へ支援が届けられるよう、日々実践を積み重ねていきたいと思います。

今後ともよろしくお願い致します。

 

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