パニックになってしまった子への対応事例 〜スモールステップと共感と言語化の使い分け〜

パニックの対応

放デイや学校現場にいると、パニックになった子どもに対応する場面によく遭遇します。

どんな人でもパニックになる可能性はありますが、教育・児童福祉の現場ではASDのこだわり行動や感覚過敏など特性をもっている子に対して、大人が特性対応を知らないで引き起こしてしまうケースは多いです。

今回は、中の人がパニックになった子どもに対応した時のエピソードと、その時に使った方法を合わせて紹介していこうと思います。


パニックを引き継ぐ

これは中の人が小学校で勤務をしていた時の話です。休み時間に職員室に向かうとき、校庭で喧嘩してパニックになっているA君を見かけました。

横で担任の先生が「嫌だったね」と言いって、落ち着かせようとしています。

しかし、

「でも、相手も嫌だったんだよ」
「君も、バカって言ったよね!」

と、なんとか悪かったことを認めさせようとします。

その先生の言葉で、「なんでぇ!!」「あいつ殺す!」と、さらに興奮してパニックになる、という状況になっていました。

しばらく見て収まりそうになかったので、横で話しかけて、
「私が対応するので、先生は授業に行ってください」
と引き受けました。

最初は落ち着かせる(言語化)

「相手が悪い!」と思っている子に「君も悪かっただろ!」と納得させようとしても、なかなか言葉は入りません。

よって、
「死ね!」「ぶっ殺す!」
と呟く子の横で、

「嫌だったね」「ムカついたんだね」

とAくんの気持ちを言語化し共感しました。

すると
「そうだよ、嫌だよ!」
「ムカつく!許せない!」
と、パニックで暴言を使っていますが、私の言葉を使って表現を徐々に変えてくれました。

言葉はイメージと繋がっています。同じマイナスの気持ちを表す言葉の中でも、表現が柔らかいマイナス言葉に徐々に変えることで、気持ちを落ち着けさせることができるのです。


クールダウン

その後、「あっち行きたい!」と言い始めました。どうやら、校庭の隅の池がお気に入りのクールダウンの場所のようです。

びわの木やクローバーが好きなようで、しばらくいじったり、トラブルとは何も関係のない雑談を続けたりしました。

頭の中が、マイナスの気持ちでいっぱいなので、トラブル時の話をすればパニックは続きます。


よって、関係のない別の話をすることで、頭の中の思考をプラスの気持ちで、徐々に割合を増やしていきます。


しばらくすると、暴言が減っていきました。すると、「あ!」と言って、池にいるカエルを見つけました。

そして、池のそばで捕まえて「もって帰ろう!」と明るく言いました。


気持ちの切り替え

この時点で、気持ちはほぼプラスの割合になったと思いました。

そして、近くの缶を渡して
「これに入れて持って帰ろう(^ ^)」
と声をかけました。

すると、素直に受け取ってくれたので、「じゃあ下駄箱行こうか」と声をかけました。これは「教室に行こうか」では、喧嘩の記憶が蘇ってしまうと思ったので、関係のない下駄箱で提案してみました。

すると、そのまま素直に下駄箱へ行ってくれました。そして、自然に教室に向かってくれました。(学校に入ったら教室に行くと言う行動が自動化している成果だと思います笑)


そうして教室に行くと、次は担任と落ち着いて喧嘩の振り返りをしてくれました。送り出す時に「さっき先生に話してくれたことと、同じことを言ってね」と声をかけました。

一度体験したことなら、再現するのも用意だからです。


振り返り

パニックになっている子は、落ち着かせないと話はできません。よって、最初は落ち着かせることに力を注ぎます。

その後、話し合いという流れにしなければ、十分に振り返ることは難しいです。今回はカエルという「楽しみ」をゲットできたので、早く切り替えができたのはラッキーでした。

また「死ね」「ぶっ殺す」という言葉を「嫌だった」「という状況の程度に合わせたマイナス言葉に合わせ変換できたのも、効果的でした。「ばか!」「死ね!」「殺す!」など、強い言葉には感情が引っ張られやすいので、この言葉を使っているうちは、なかなか感情の高ぶりはおさまりません。


したがって、トラブルの内容にちょうどいい言葉に変えてしまうと切り替えやすくなります。その時に、「それは、『嫌だった』ぐらいだよ!」と正面から言っても子どもには伝わりません。




横で「嫌だったんだね」「ムカついたね」と共感の声かけとして投げかけることで、子どもは聞いてくれます。
これはアイメッセージと同じように、選択権は子どもに与えながら声をかけると、子どもも受け入れて言葉を変えてくれやすくなるという効果もあります。


 

最後に

今回は、事例を通してクールダウンさせるための方法を紹介しました。

しかし、パニック対応の基本は、「そもそもパニックを起こさせない」という予防対応が基本です。

まずは、子どもの特性を理解し、過ごしやすい環境を整えてあげることを第一に考えていきましょう。その上で、パニックになってしまった時の対応の一つとして参考になれば幸いです。

以上です(^ ^)


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