ICD-11とは?
ICDとは、正式名称は「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(国際疾病分類)」と言います。WHOが定めた病気の診断に関する国際的な基準であり、日本でも多くの病院がICDの基準に基づいて診断を行なっています。
昨年度の2019年5月に、このICDが約30年ぶりに改定され第11版(ICD-11)が承認されました。
現在は、厚生労働省・総務省が審査中であり、今後1年程度で日本国内で周知・適用されていく予定になっています。(コロナウイルスのため、遅れる可能性はありますが…)
影響としては、現在の日本の法律や公的文書は、ICDの診断基準に沿って作られているので、日本語への翻訳版が完成次第、内容の変更が行われると言われています。
例えば、日本の発達障害者支援法には「アスペルガー症候群」や「広汎性発達障害」など、現場ではあまり使われなくなってきた言葉もありましたが、これらも無くなっていくと予想されます。
福祉・教育の分野で発達障害者支援に関わっている人の生活にも、影響してくると思いますので、新たに変わったところをまとめてみました。
名称の変更
日本語訳は日本精神神経学会が作成中で、翻訳案を公表しています。
基本的にDSM-5(アメリカ精神医学会の基準)に準拠しているようですが、いくつか今後の動向が気になる内容もありますので、以下で紹介します。
◆心理的発達の障害→神経発達症群
区分としては、DSMに沿った「神経発達症」の概念が採用されました。現在は、日本は「発達障害」という名前で広く知られていますが、今後は使われなくなっていく可能性があります。
◆知的障害→知的発達症群
知的障害の名称は「知的発達症」になりました。軽度、中等度、重度、最重度の区分分けはそのままのようです。
◆会話及び言語の特異的発達障害→発達性発話または言語症群
現場では、発達性読み書き障害などが有名な言語障害の区分は、「発達性発話または言語症群」になりました。
詳細区分として、
- 発達性語音症
- 発達性発話流暢症(吃音)
- 発達性言語症
などに名称が変更になっています。
現場では、滑舌が悪い語音症や、いわゆる吃音である発達性発話流暢症は、現場では見ることが多いです。ただ、言語症は徐々に見なくなっている印象です。(音韻に困難がある点で、LDとして診断されているケースが多いような気がします。)
◆自閉症→自閉スペクトラム症
スペクトラムの考えが広まってきた自閉症も、DSM-5に揃えたようです。
◆学習障害→発達性学習症
学習障害は「発達性学習症」になりました。
「発達性」で統一してくれるとわかりやすいですね(^ ^)
- 読字不全
- 書字表出の不全
- 算数不全
詳細区分もDSM-5に揃いました。
◆運動機能の特異的発達障害→発達性協調運動症
DSM-5に揃って、発達性協調運動症の名称が採用されています。
これで発達性協調運動症の認知がより進むと感じます。
◆チック症
情緒障害の分類だったチック症は、神経発達症の分類へと移動したようです。
詳細区分に
- トゥレット症候群
- 運動のチック症
- 音声のチック症
などが入ります。
◆多動性障害→注意欠如多動症
欠陥の字は→「欠如」に統一されたようです。
「欠陥」のイメージ悪かったですものね^^;
- 不注意優勢型
- 多動衝動性優勢型
- 混合型
はそのままですが、型で分けるよりも本人の症状をよく見ることが重視されている昨今では、明確に分けなくて良いという認識が進んでいます。
◆常同運動症
自傷に伴う常同運動症の項目
これは過動性障害が変更になったのかな?よくわからないので、再度調べてみようと思います。発達障害者支援に関わっている人には、このような変更に伴って、少し名称が変わっていくと思います。
ただ日本の診断基準は多くがDSM-5に揃えているので、しばらくは変化は少なそうな気がしますね。
◆その他
変更のポイントには、伝統医学(主に中国・日本・韓国の漢方)の内容も入りました。
以前から発達障害症状に漢方が効果的と主張する医師の方も存在していましたので、今後は目にすることも増えるかもしれません。(漢方は副作用も少ないらしいので、安心感はありそうです。)
他には、ICD-11には睡眠障害やゲーム障害に関するカテゴリーが新設されました。
発達障害を抱える人の中には、睡眠障害を合併していることが知られていますし、ADHDの人は依存症になりやすい、という特徴ももってますので、今後の話題になっていくことが予想されます。
最後に
発達障害関連の情報は次々と新しく更新されるので、常に把握しておく必要があります。質の高い支援を継続するために、色々な情報を網羅していこうと思います。
なお、内容はあくまで現時点(2020年5月9日時点)のものなので、今後も続報が入り次第発信していこうと思います。