ビジョントレーニングとは? 〜発達障害は視覚機能に困難が多い?〜

ビジョントレーニングとは?

ビジョントレーニング とは、簡単に言えば「眼の機能を鍛える訓練」です。

最近では、ボクシングの村田選手が実践していることで有名になりましたが、元々はアメリカ空軍のパイロット訓練法として開発されたトレーニングと言われています。そして今では、

  • LDの人の識字能力の向上
  • 運動能力向上

などに効果があるという研究もあり、特別支援教育においてビジョントレーニングの有効性が広まっている最中です。

視覚機能とは?

視覚機能は主に3種類に分かれます。

①眼球運動

筋肉で目を動かしたりピントを合わせる力です。

  • 対象物を目で追っていく力(追従性眼球運動)
  • 対象から離れている対象へ一瞬でジャンプして見る力(跳躍性眼球運動)
  • 両目の連携(両眼視機能)

上記の3つの力があります。目を動かす筋肉が衰えると、この眼球運動の機能は低下します。

②視空間認知

対象物の色や形や位置などを把握する力です。これは筋肉ではなく、目から入った情報を脳で処理する力です。

目から脳に情報が入る、または出る過程に何か困難があると、この視空間認知の力は低下します。

③目と体の協応

目で見た情報で判断して体を動かす力です。目と体の協応する力が弱いと、例えばキャッチボールをしても、適切な場所に手が出ないのでボールが取れない、という現象が起きます。

ちなみに、現場で療育を行っていると「視覚優位な人は、目と手の協応が進みやすく比較的器用」という現象が見られることはよくあります。

事例

3つの視覚機能は、例えば野球のフライを取る場面では、

  • バッターが打ったボールを目でおう→眼球運動
  • ボールを見て落下地点を予測する→視空間認知
  • 落下地点に移動し、ボールをキャッチする→目と体の協応

一例ですが、このように力を使い分けています。

発達障害の人には視覚機能が低い人が多い?

近年、療育においてビジョントレーニング が注目されています。発達障害を抱える人は視覚機能に困難をもつケースが多く、ビジョントレーニング によって勉強や運動の機能改善が期待されているからです。

そもそも、発達障害の人が視覚機能に困難をもつことが多い理由は、
「発達障害は脳機能の障害なので、目から入力された情報処理をする脳機能に困難が付随している」
という説や、

「感覚過敏の影響で発達段階で体幹の力が十分に鍛えられない」

「体幹が弱いと姿勢が悪くなる」

「体のひねりが少なるので、目線が安定しないために視機能も低下している」

という二次的な現象の結果で視覚機能の困難がおきている、など色々な説があります。

一説には発達障害の5〜8割の子には視覚機能になんらかの困難があるとも言われるため、特別支援・療育でビジョントレーニングを行う意義は大きいと言えます。

学習への影響

学習は視覚機能を多く使うため、視覚機能に困難があると、

  • 黒板の字を写すのに時間がかかる
  • 教科書を読んでも字や行を飛ばして読んでしまう
  • 視界のピントが合わないのでぼやけて見えてしまい目の疲労がたまる

など様々な影響が現れます。

そもそも情報の入力は、「目で見る」か「耳で聞く」が大部分です。その半分に困難があると考えると、影響の大きさは想像できるでしょう。

トレーニング事例

実際にどんな活動があるのか、いくつか紹介します。

◆ナンバージャンプ(眼球運動、数感覚)

椅子に座って、数字の書かれた枠を目の前にかざします。そして、

  • 黄色の1〜10
  • 赤の1〜10
  • 青の斜め5往復
  • 緑の斜め5往復

の順で顔は動かさず、目だけで移動して行きます。

枠の向こうに先生が立つと、子どもの目線が見えるので正しく行えているかチェックしながら行うことができます。(視覚に課題のある子は、目だけ動かすことが難しいため、自然に顔も動く様子が見られることがあります。)

1日1回30秒〜1分で終わるので、学校や放デイでも、手軽に取り入れることができます。

◆ナンバータッチ(眼球運動、視空間認知、目と体の協応、数感覚)

  • 白のボードに1〜20までの数字を書く。(ラミネートをしておく)
  • 1〜20の順で見つけたらホワイトボードペンで丸をしていく。(ホワイトボードペンなら劇落ちくんで消えます。)

なお、タイムを計っておくと、記録を縮めようと子どもも熱中します。

◆ナンバータッチ:黒板バージョン(眼球運動、視空間認知、目と体の協応、数感覚、粗大運動)

  • 黒板や大きめのホワイトボードにナンバーを書く
  • ペンは使わず、タッチするだけ
  • タイムを計ると休み時間に子どもが熱中して取り組む

視覚機能だけでなく、協調運動機能や粗大運動も鍛えられる活動です。(黒板に書くときに、子どもが触れるギリギリのところに数字を書くと、運動量がかなり上がります(^ ^))

ただ黒板に数字を書くだけででき、友達と楽しみながらできるお手軽トレーニングです。

◆ボール運動

野球のフライの事例でも紹介しましたが、ボールを使う球技は視覚機能をフルに鍛えられるトレーニングです。

実際に欧州では、サッカーやバスケットは視覚機能の改善みならず様々な効果があると研究も進んでいるので、球技を用いた療育スクールも盛んです。日本でも徐々に球技の療育効果に注目をして、取り入れるとことが増えてきています。

終わりに

色々紹介しましたが、ビジョントレーニングは、まだまだ研究が進んでいる途中です。

「眼球運動による学力低下には効果があるが、視空間認知など脳内機能の向上には繋がらない。ビジョントレーニングで学力、運動能力が改善したのは2割程度」

という研究結果も見られます。(2割でもすごいですが・・・)

一方で、社会性に大きな関係のある、

  • 計画性など司る実行機能
  • 対人関係の構築に大きな影響を与える抑制機能

などの前頭前野の活性化にもつながる、とされる意見もあり、今後の研究が楽しみでもあります。

目の前の子どもに合わせて、多様な教育・療育を展開できるよう引き出しは多くしていこうと思います(^ ^)

参考になれば幸いです!

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