暴言暴力の多い子
先生が子どもの指導をしている時に、最も困ってしまう行動は暴言暴力の多い子です。
子どもにも色々な背景がありますが、暴言暴力は生きていく上で、社会的にアウトな行動ですので、何としてもやめさせなければいけません。
しかし、子ども自身もパニックの状態であったり、様々な過去の経験から起きていることも多いので、改善は難しく、苦手な先生も多いです。
その結果、威圧的な指導や恐怖的な対応に頼らざるおえず、さらに子どもが悪化していく、という悪循環に陥ってしまうことがあります。
今回は、そんな「暴言暴力が出やすい子」に対するアプローチの紹介です。
暴言暴力=怒りやすい人??

ここで、名古屋学芸大学准教授である今井庄司先生の「衝動的な攻撃行動をする子」についての研究を紹介します。
子どもたちに怒り、・攻撃行動の尺度を用いて調べた結果、2つのことがわかりました。
①怒りやすさは、攻撃行動に直接結びついているとは限らない
②怒りやすさは「衝動性」を伴うと、攻撃行動に変化しやすい
つまり、怒りやすい子が必ずしも、他の子を攻撃してしまうわけではなく、「高い衝動性」が伴った子に、攻撃行動が起りやすい、ということです。
これは逆に
「衝動性が高い子は、ダメだと思っていても攻撃してしまうことがある」
という子でもあります。
つまり、他害行動を改善するには、この「衝動性」にアプローチすることが大切だということです。
どうすれば良い?

実際に、衝動性が高い子は、つい「このヤロー」と叩いてしまう場面は、教育現場ではよく見ますし、逆に怒りっぽい子が「ぐぬぬ・・・」と静かに怒っている、という場面もよく見ます。
そして、具体的な行動に直結する「衝動性」を改善することが、他害行動を改善するには有効となります。また、今井先生は、アンガーマネジメントやSST(ソーシャルスキルトレーニング)など共に「注意機能」へのアプローチを紹介しています。
衝動性を抑える「注意機能アプローチ」

注意機能は以前の記事でも紹介しましたが、
◯選択的注意
(複数の物の中から1つだけ選んで注目する力)
◯注意の転換
(1つの対象から、別の対象に注意を移動する力)
◯注意の分割
(複数の対象に注意を向ける力)
というものがあります。
先ほどの研究の続きで、この注意機能、特に選択的注意の力が「衝動性」を抑える効果があることがわかりました。
ADHDなどは注意の力が低いために特性行動が起こるといわれていますので、この注意の力を鍛えることで、衝動的な他害行動を抑えることができると考えられています。
例えば、簡単な問題を授業の最初に数分間行って「静かに集中する」という経験を繰り返すことで、注意の機能が高まり、他害行動を減らす効果があるとされます。
例えば、
国語の授業の最初に、静かに漢字ドリルを5分取り組む
算数の授業の最初に、簡単な計算問題を5分取り組む
社会の授業の最初に、都道府県の暗記タイムを作る
などのように、集中して1つの課題に取り組むことが、結果的に衝動性を抑えて、他害行動の改善につながります。
実際に学校現場では、
「静かに活動する時間を作ることが、落ち着いた学級に育てるには効果的」
という文化は昔からあります。
これは、注意機能を高めるアプローチの効果を活用した物なのかもしれませんね(^ ^)
今井正司・坂本條樹・佐藤有佳・今井千鶴子・熊野宏昭(2013)神経心理学的機能の向上が発達障害に特有な認知行動的課題の改善に及ぼす影響:中間報告. 発達研究, 27, 141-148.
最後に
今回は「注意機能アプローチを活用した、他害行動の改善」について紹介しました。このように、別の力と思われているものが、実は影響を与えていることはよくあります。
どんなに熱心でも、子どもの行動が良い方向に改善するアプローチができないと意味のないものになります。
ぜひ子どものために色々なアプローチを使える支援者になりましょう(^ ^)