凸凹マップ!第2回【後編】発達障害体験談〜自分の取扱説明書〜

シリーズ「凸凹マップ!」について

シリーズ「凸凹(でこぼこ)マップ!」は、発達障害当事者の人たちの体験談をまとめた連載です。

発達障害は(でこ…得意な部分)と(ぼこ…苦手な部分)の差が大きい障がいと言われています。
詳しくは発達障害とは何か? 〜法律に基づく3つの特徴〜をご覧ください。

こうした発達障害について、まだまだ世の中には認知されていない現状があります。目には見えづらい障害だからこそ、なかなか周囲に辛さを分かってもらえず、苦しい思いをしている当事者の人たちが多く存在しています。

シリーズ「凸凹マップ!」は、そうした人たちの手助けをするために執筆しました。この連載が、発達障害で悩む当事者、保護者、支援者の人たちの、障害を理解するヒントになれば幸いです。

前編のふりかえり

スーさん

  • 女性
  • ADHD(注意欠陥・多動性障害)当事者
  • コールセンター勤務(オープン就労)

(前編はこちら)


発達障害の事実を知らないまま、スーさんは大人になっていきました。
多くの仕事にチャレンジし、一生懸命に働こうとするスーさん。

しかし、周囲の理解を得られず、人間関係面で苦境に立たされてしまいます。

「常に働いていなければいけない」感覚があると語る、スーさん。

生き辛さのトンネルに出口はあるのでしょうか。

後編では、スーさんが発達障害の診断を受けたその後を綴ります。

発達障害体験談

診断を受けたきっかけ

前編の冒頭でも少し触れましたが、
スーさんが診断を受けたきっかけについて教えてください。

はい。
職場で嫌がらせのようなことを受け、転職をしても、人間関係面でどうにも難しい状況が続いていました。
さまざまな仕事を経験する中で、うつ病を発症してしまいました。
病院を受診したら、うつ病と同時に発達障害の診断も受けた形になります。

二次障害の症状で受診をしたら、発達障害が明らかになったわけですね。


※二次障害についてはこちらの記事を参照ください。
発達障害の二次障害とは?〜原因・症状・行動〜【予防と対応のステップ】

追い詰められて、苦しくて受診した・・・・・・というのが、正直なところですね。

職場の配慮が得られるケースも

ADHDの診断を受けて、どのように感じましたか?

もしかして・・・という考えは診断前からありました。
そういえば、インターネットで自分の症状を調べたこともあったのです。
症状を思い返すと、子どもの頃から当てはまることが多かった・・・

通院を始めた現在、コンサータなどの、発達障害の薬も処方されているそうですね。効果はどうでしょうか?

薬は正直、効果を感じませんね。
副作用はありませんが、良い効果もないというか、変化は何もない感じです。
今かかっている先生は薬を処方したがる傾向があるので、続けていますが。

なるほど・・・薬の効き方には個人差が多いと聞きますからね。

お仕事の面では、現在はいかがでしょうか?

他の仕事ではクローズ就労(※障害を明かさずに就労すること)だったのですが、今のコールセンターの職場では事情があり、オープン就労(※障害を明かして就労すること)にしています。

事情とは・・・?

これも発達障害の症状なのかもしれませんが、昔から音と光にとても敏感でして・・・

特に、雷が本当に苦手なんです。

コールセンターは窓のある職場のため、席の位置や、カーテンを閉めてもらうなどの配慮をいただきました。

手帳を出すことで、配慮してもらうことができたのですね。


※発達障害を持っている方は、程度によって障害者手帳を交付される場合があります。
発達障害の場合は、「精神障害者保健福祉手帳」になることが多いです。

手帳は交付された後、就労先に提出する義務はありません。
状況に応じて、手帳を見せる、見せないといった選択肢が可能になります。

二次障害の影響は続く

投薬がなかなか効かないとなると・・・
色々と、お困りなのではないでしょうか・・・?

体調はかなり波があります。
二次障害のうつの症状は、時期によって軽くも酷くもなります

うつの時期になると、ぼんやりして頭が働かなくなってしまいます。

精神面での落ち込みも、かなりありますよね。

漠然とした悲しみに襲われるというか・・・
号泣しながら仕事から帰るような日もありました。

今は短期や長期で、非正規の仕事をつないでいますが、
本当は週5日の、フルタイムの仕事がしたいのです。

スーさんは業種をあまり絞らずに、かなり柔軟に求職活動をされていますよね。
それでも、希望の雇用はなかなか見つからないのでしょうか?

難しいですね。
障害のこともありますし、うつのこともあります。

今、私は30代の半ばですが、年齢を重ねることによって、選択肢の幅が狭まっているのも感じます。

・・・しがみつくように生きています

自分の取扱説明書を作ろう

お辛い経験も含めて詳しく聞かせてくださり、ありがとうございました。

同じ立場で、今発達障害に悩んでいる人たちに、メッセージをお願いいたします。

そうですね・・・
私も当事者ですから、努力だけではどうしようもない部分はあると思っています。
今の子どもたちと、私では状況が違うところもあります。
それを踏まえてお伝えしますね。

「生きていれば、なんとかなる」

周囲を頼ってください。
Twitterなど、声を上げるためのツールはあります。
分かってくれる人はいるはず
なんです。

「自分自身の取扱説明書を作りましょう」

私は大人になる過程で、説明書を作ることができなかったんです。
歳を重ねるにつれ、困ることは増えていきます。
早いうちに説明書を作ることができたら・・・助かるかなと思います。

自分自身を理解して、居心地良く過ごせるようになるための「説明書

それから、声を上げて、周囲に助けを求める「勇気

このふたつですね!

取材に応じていただき、ありがとうございました。

同じ境遇の方のお役に立てれば、うれしいです。

第2回まとめ

大人になるまで自身の発達障害を知らず、解決法を見出せないまま、多くの困難に直面してきた、スーさん。

生きづらさを抱えながらも、諦めずに、ひたむきにチャレンジする姿勢
勇気づけられる方は多いと思います。

今回、スーさんを取材させていただき、
発達障害によって起こる困りごとのうち、負の側面を綴りました。

・周囲の無理解によって精神疾患を引き起こすリスクがある
・それによって、就労が困難になるケースがある

こうした苦しみは、
多くの当事者の方が抱えている現実でもあります。

発達障害に理解を持つ人が
社会にひとりでも増えるように
活動を続けていきたいと思います。





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