意外と知らないSLDへの支援

 学校での授業や家庭学習で、ノートを書きたがらない、ワークシートを全然書かない、宿題を全くやらない、やっても適当、あるいは答えを写すだけ、なんてお子さんがいないでしょうか。

いろいろな原因が考えられるのですが、もしかしたら、字の読み書きに苦手さがあるのかもしれませんね。

知的水準や身体の機能に大きな障害はないものの、読み書きや計算など特定分野の学習に極端な苦手さがある場合、限局性学習症(SLD、学習障害、LD)の可能性があります。文字が歪んで見えたり、逆さ文字に見えたりする。数字の大小や数量関係など、数に関する概念の理解が難しいなど、症状は様々です。

学校生活では、音読やテスト、板書をノートに写すなど、たくさんの文字を読むことが求められます。字を読むことに苦手さがあるお子さんにとって、その時間は苦しい時間になりかねません。

やる気はあるのにうまく読めない。友達にからかわれたり、問題の意味が分からなくてテストができなかったり。頑張ろうと思っているのにうまくできないことが続くと、自己肯定感が下がり意欲も低下します。

SLDは症状も対策も様々です。すでに様々な支援方法が広がってきましたが、今回は意外と知らないちょっとした支援を2つ紹介します。

●フォントによる読みにくさ

3つの「ふ」を見比べてみましょう。大抵は、どれも同じ「ふ」と認識するのですが、
読み書きが苦手な子の中には、これらは別々の字に見える場合があります。
小学校の国語では、教科書体のように4画で習うのに、突然、数字の3に点が付いたもの(ポップ体)、2画にしか見えない筆文字(明朝体)などが出てきて混乱をします。

 

「さ」も同じように3画と2画のものがあります。特に明朝体の「さ」は、「ち」と混同されがちです。
「つ」と「し」、「あ」と「お」、「ぬ」と「め」なども違いが判りにくく、読みにくさにつながります。
 

最近では、読みにくさを軽減する「UD体」というものも普及してきました。

学習の場面では、できるだけわかりやすいフォントを活用することが望ましいでしょう。

●ルビつきのワークテスト

SLDの中には、漢字を覚えることに困難さを抱える児童生徒もいます。最近では、デジタル教科書の普及により、教科書の本文にルビをふってくれる機能が備わったものも多いです。

しかし、小学校で単元ごとに行われるワークテスト(カラーテスト)はデジタルではないので、そうはいきません。問題文が読めないために問題が解けず、教師が隣で読んであげることで耳からなら理解し、解くことができるなどの支援がされています。

そこで、平仮名だったら読めるようであれば、教師がテストを教材屋さんに注文する際に必要人数を伝えることで、人数分を無料でルビ付きに変更してもらうことができます。

「障害者差別解消法」が平成28年から施行され、読み書きに関する補助手段の提供が合理的配慮として義務付けられました。高校受験や大学受験などでも、条件を満たせば同じ配慮を受けることができます。

 教師の中でも「ルビ付きテストの存在を知らなかった」、「知ってはいたけれど使ったことはない」という人も少なくありません。保護者の許可や、学年や校内での共通理解が必要にはなりますが、学年全体でルビ付きテストを使いユニバーサルデザインを進めている話も聞いたことがあります。

読めることで問題が解け、学校生活が少しでも明るくなるのであれば、ぜひ試していきたい支援です。

●終わりに

先にも書いたように、SLDへの支援は多種多様です。板書をタブレットで撮影する、大事なところだけ書く、新出漢字を1画ごとに色分けする、など、すでに様々な支援が広まってきています。

今回は「意外と知らない」という観点で2つの支援を紹介しましたが、「たったの2つ」という思いが正直なところです。今後も現場での経験をたくさん発信出来たらと思います。

 SLDに限ったことではないですが、当事者がどんな苦手さをもち、どんな支援をしたら前向きに取り組めるのか。その引き出しを増やしていき、支援につなげていきましょう。