子どものADHDと大人のADHDは異なる?

ADHDの研究

ADHD(注意欠如多動症)は発達障害(神経発達症)の1つです。

文科省や自治体の調査では、普通学級に3~5%存在すると言われており、不注意・多動性・衝動性という注意力に困難を抱える症状であるため、学校や会社など様々な場面で困り感を抱えるケースが多く、支援体制の構築が急がれています。

ADHDは世界的に有名になっており、様々な研究も行われていますが、今回は「子どものADHDと大人のADHDは異なる?」というテーマで紹介していきたいと思います(^ ^)


従来のADHDの考え方

従来は、児童期にADHDと診断された人は、成人になっても不注意症状が継続すると考えられてきました。

一方、多動性・衝動性は約半数が10歳以降の成長期に改善することも報告されてきました。

しかし、2015年にニュージーランドで行われた大規模調査ではこの流れを覆す結果が出ました。


ニュージーランドの研究

1973年に誕生した子ども1037人を対象に38年間の追跡調査を行った研究です。

 ▶︎ 幼児期にADHDと考えられる子どもが61人
 ▶︎ 38歳時点でADHD診断を受けた大人のADHDは31人

という数値になりました。

これだけで見ると、「半分が症状が残っていた」と考えられますが、実際に内訳を見ると、幼少期にADHDで成人期にもADHDの診断を受けた人はわずか3人でした。

つまり、「子どもの頃にADHDだった人は大人になると9割がADHDではなくなっていた」ということです。


成人のADHDは原因が異なる?

上記の結果は、かなり衝撃的な内容でしたので、現在でも様々な仮説立て・研究が行われています。

特に、12歳以上になってから始めてADHDの症状が発症した28人はどのような背景があったのかが注目されています。

研究者は、以下のような仮説を出しています。

1つは、若年性認知症の可能性です。しかし、発症年齢が若すぎるため可能性としては低いと考えられました。

2つ目は、他の疾患によってADHD症状が発生している可能性です。成人期ADHDは、薬物依存症、行為障害、うつ病、不安障害などを持っている割が多いため、これらが影響を与えたのではないかと考えられます。

しかし、成人ADHDの半数は他の疾患がないことも報告されており、更なる調査が必要とされます。


3つ目は、小児期のADHDを見過ごした可能性です。実際に成人期のADHDを抱える人の幼少期の行動の様子を把握するのは、非常に難しく見過ごしている可能性も否定できないということです。

4つ目は、今まで発達障害は幼少期より症状があることが前提でしたが、成人期に発症する神経発達症が存在するのではないか、という可能性です。これは、今までの発達障害の概念を変える発想であるため、今後更なる調査が必要とされます。

終わりに

このように、ADHDは今現在でもわからないこと、未解明な部分が多く含みます。

特に、幼少期のADHD児の支援者と成人期のADHDの支援では、異なった知見が必要になるかもしれません。現場の支援者として、研究者の方々の意見を参考にして支援に臨むと同時に、今後も新しい考え方や概念が生まれてくることを十分に把握していきましょう!

以上です!何か参考になれば幸いです(^ ^)

Is Adult ADHD a Childhood-Onset Neurodevelopmental Disorder? Evidence From a Four-Decade Longitudinal Cohort Study

https://ajp.psychiatryonline.org/doi/full/10.1176/appi.ajp.2015.14101266?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed



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