なぜ発達障害を抱える人は、睡眠障害を併発することが多いのか?

睡眠障害とは?

睡眠障害とは、睡眠に何からの困難を抱えている状態を指します。不眠症を代表として、

▶︎起床困難
▶︎過眠症(ナルコレプシー)
▶︎SAS(睡眠時無呼吸症候群)
▶︎睡眠時驚愕症
▶︎夢中遊行(夢遊病)
▶︎体内リズムが崩れる概日リズム睡眠-覚醒障害

などあり、様々な症状が睡眠障害に含まれます。そして、ASD,ADHDを初めとする発達障害を抱える人には50%近く睡眠障害を抱える人が存在していると言われます。

一体なぜ、睡眠障害を併発することが多いのでしょうか?

※なお、下記ではADHD薬についても紹介していますが、医療機関との適切な連携につなげるための臨床のケース事例です。詳しくはかかりつけのお医者様にお尋ねください。


睡眠障害になる原因

発達障害を抱える人が睡眠障害になりやすい原因は、まだ正確に分かっていません。例えば、ADHDのある子では、ドーパミン系の機能の不全による注意力の低下が知られていますが、ドーパミンは日中の覚醒(目が覚めて集中できている状態)にも関わっているため睡眠が乱れてしまう、という説があります。

一方で、ASD(自閉症スペクトラム)のある子では、不安や抑うつなど精神的なストレスを抱えてしまうことが多いことが報告されているため、心理状態の不安定さが睡眠の質の低下につながっているケースなどが報告されています。

しかし、明確な原因は特定されておらず、現在は複合的な要因が原因で起こる多因子モデルでの考え方が主流です。

興味のないことに集中できないと・・・

複合的な要因と上記で紹介しましたが、その中でも「発達障害のある子は、興味のないことに集中しにくい特性が睡眠障害につながっている」という仮説が注目されています。ADHDやASDの子は、脳の報酬系回路の働きが弱く、目の前に報酬(メリット)がない状態では動くことが難しい、という特性があります。

逆に、楽しいことであれば、脳は機能し続けるので、同じ行動を長時間に渡って集中することができるのです。(これが過集中という状態)これは視点を変えると、
「興味のないことに取り組む」=「覚醒が下がる(眠くなる)」
という現象につながります。

その結果、発達障害のある子は、興味のないことをやる時間が増えるたびに「睡眠状態」に入ることになり、日中は眠気がひどい時間が増えることになります。もちろん、寝てしまえば夜の就寝時間は遅くなるなど、安定した睡眠が難しくなってしまいます。

つまり、子どもにとって「興味のない時間」を増やすことは、それだけ睡眠障害のリスクを高めることになるのです。

現在、学校のカリキュラムは大幅に増加していますし、放課後も習い事で予定が詰まっている子は多くいます。しかし、これらの課題が子どもたちの睡眠に影響していないか、今一度見直す必要があると言えるでしょう。

どう対応すればいい?

発達支援の現場では、発達障害のある子を担当すると、同時に睡眠に課題をもっているケースはよくあります。もちろん、個々の様子を把握して対応することが第一ですが、睡眠や食事など生活習慣の乱れは行動面に大きな影響を与えます。実際に、食事・睡眠・運動などの生活習慣が改善することで、行動面の課題が改善につながるケースは多いです。

よって、最初に発達支援の現場で子どもの様子をヒアリングする時は生活習慣の聞き取りを重視するのは効果的です。また、ADHD薬のコンサータ(メチルフェニデート)は、脳の覚醒度を高めて目を覚ます効果があります。過眠傾向にあるADHDの子は、コンサータの使用で睡眠が改善したり、あるいは覚醒しすぎて夜に眠れなくなる、といった状態になるケースがあります。

もし、ADHD薬を使用中の子どもで、睡眠の課題が見られる場合は、保護者と相談の上、かかりつけの医療機関に相談を促すのも一つの手と言えます。

また、睡眠は毎日のことなので、家庭で既にできる限りの対応はしているケースは多いです。よって、福祉施設・学校などでも可能な限り対応することは大切です。

例えば、朝に起床困難で起きられず学校に間に合わず遅刻を繰り返してしまう、という子であれば、朝の1時間目に図工や体育など、その子の好きな課題を入れると、やる気が高まり朝の起床が楽になるかもしれません。

また、不眠症の子であれば、学校の休み時間に一緒に外で遊ぶ、放デイの運動プログラムの量を増やしてみる、など日中に身体的な疲労を増やすことで自然に睡眠に入ることができるかもしれません。

睡眠障害の原因は多岐に渡りますので、家庭・学校・施設・医療それぞれが連携をしてアプローチすることが大切になります。

終わりに

今回は、発達障害と睡眠障害の関係について紹介しました。まだまだ未解明な部分は大きいですが、発達支援においては「基本的な生活習慣の改善」は、どんな時も第一に考えて取り組むことが非常に大切になります。

目の前の行動に目を奪われることなく、成長の土台を大切にする視点を持ち続けたいですね!以上、参考になれば幸いです(^ ^)


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