自閉症療育の歴史を知ろう 

ASD

はじめに

発達支援の業界では、数多くの療育方法が存在します。

療育は早期から始めることで、将来の行動面・思考面で予後が大きく異なるため、親御さんは我が子に適した療育を必死に探します。

しかし、現在は数多くの療育プログラムが存在し、一体何にどんな特徴があり、どんな療育が良いのかなかなかわかりづらいのが現状ではないでしょうか?

今回は、数ある療育の中でも日本で展開されている主要な自閉症療育をまとめてみました(^ ^)


⓪初期

ASD(自閉症スペクトラム)は、1943年にカナー(Kanner.L)が世の中に発表をして知られるようになりました。しかし、ASDの実態はよく分からなかったため、新しい考えが出るたびに治療方法が混在している状態でした。

その中でも初期のASDは後天的なものと考えられていたため、ベッテルハイム(Bettelheim,B)の絶対受容的アプローチや、抱っこ療法などの精神療法が中心でした。

しかし、徐々にASDは脳機能の障害(先天的なもの)と判明し、母子関係が原因でないことがわかると、これらのアプローチは姿を消していきました。

①行動的アプローチ

1960年代は、スキナーが創始した行動療法やABA(応用行動分析)などの行動的アプローチが普及しました。最初は、適切な行動を提示し、できれば報酬を与えて学習していく伝統的な行動療法が主流でした。(代表的なものにロバース法があります)

その後、もっと子どものモチベーションを生かして、汎化(実際の生活で使える)を意識した療育方法が求められるようになります。

そうして、生まれたのが現代型ABAと呼ばれる療育であり、代表的なものにPRT(機軸行動発達支援法)が知られています。

このような現代型ABAが、現在の行動的アプローチの主流となっています。
なお、他に代表的なアプローチとして、行動療法に認知療法を取り入れたCBT(認知行動療法)などが存在します。


②発達論的アプローチ

1990年代には、「心の理論」に代表される社会的認知発達の研究が進むにつれて、ASDの子は乳幼児期の「共同注意」に困難を抱えることが徐々にわかってきました。

このような、共同注意や社会的コミュニケーション、間主観性の発達などに着目して生まれたのが発達論的アプローチと言われます。

代表的なものに、グリーンスパン(Greenspan, S.)が作成した、ASDの8つの発達段階に合わせた支援を行うDRI/Floor-timeモデルがあります。

③包括的アプローチ

行動的アプローチと発達論的アプローチが広まる中で、両方の良いところを組み合わせた包括的アプローチが生まれました。

代表的なものは、SCERTSモデルESDM(アーリースタートデンバーモデル)があります。これは、ABAや発達論的アプローチ、TEACCHなどの方法を融合させて体系化した療法です。

日本でも、この包括的アプローチが徐々に広まっています。しかし、メインアプローチはABAや運動療法などが中心であり、今後は発達論的アプローチや包括的アプローチも広まっていくと予想されています。

④コミュニケーションアプローチ

①〜③の流れと並行して、コミュニケーション療育も開発されてきました。これは、ASDには言語発達やコミュニケーションスキルの発達に遅れが見られることが多いためです。

初期は言語理解や言語表出の発達を促すアプローチが主流でしたが、現在では、言葉以外の「絵・シンボル・手話」などの代替ツールを使うことでコミュニケーションスキルを高めるAAC(補助代替コミュニケーション)などのアプローチがあります。

その他に行動的アプローチと組み合わせたソーシャルストーリーや、語用論と組み合わせたインリアルアプローチなどがあります。

⑤運動的アプローチ

ASDの特徴として、感覚の困難や不器用さの併発が多いことがあげられます。そこで、感覚統合療法音楽療法など感覚と運動に合わせた療育方法も数多く開発されています。

これはASDへの療育効果がはっきりしていないという背景もあり、あまり行われない国もある一方で、日本では療育として定着しています。

最後に

今回は、代表的な療育方法をまとめて紹介しました。

しかし、上記以外にも様々なアプローチがありますので、支援者は色々な療育方法を知り、支援の幅を広げることが大切です。また、当事者の保護者は不安を感じている方が多いので、適切な情報提供ができるよう、共に学んでいきましょう(^ ^)

以上、参考になれば幸いです。



(参考)尾崎康子/三宅篤子(2016)『発達障害の療育』ミネルヴァ書房

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