発達障害とワーキングメモリの関係性① 〜学習障害に特有の記憶の認知特性は?〜

記憶とワーキングメモリ

ワーキングメモリとは、「情報を一次的に記憶・処理する能力」と言われ、人間の活動に大きく関わっている力です。

学習には、主に短期記憶とワーキングメモリが使われます。
(以下、短期記憶とワーキングメモリの関係性)

短期記憶とは、取り入れた情報を一次的に覚えておく力です。そして、短期記憶には、

▶︎ 言語的短期記憶 =会話や音などの音声情報を一時的に記憶する力
▶︎ 視空間的短期記憶=目で見たイメージ情報を一時的に記憶する力

という2種があります。

例えば、言語的短期記憶が低いと、先生に言われた指示(音声情報)をすぐに忘れてしまうという行動が起こります。そのため、先生の指示が伝わらず困ってしまう、あるいは「言うことを聞かない子」というレッテルを貼られてしまうことがあります。

一方、視空間的短期記憶が低いと、目で見た視覚情報、イメージを覚えておくことが苦手になるため、黒板を見てノートに書くことが苦手だったり、先生に「何があったの?」と聞かれても場面が思い出せず、「覚えてません」と言ってしまうような場面が多くなります。

一方、ワーキングメモリにも、

▶︎ 言語性ワーキングメモリ =音声情報を一時的に記憶し処理する力
▶︎ 視空間性ワーキングメモリ=視覚情報を一時的に記憶し処理する力

という2種類あります。こちらも、学習や日常生活で非常に活用される力になります。


学習障害と記憶の傾向

ワーキングメモリは、学習や日常生活に密接に関係しており、ワーキングメモリの量で将来の学力や社会的成功も予測できるとも言われます。

そしてLD(学習障害)を抱えている人は、上記で紹介した、短期記憶とワーキングメモリの傾向があると言われます。そして、記憶の特性を把握することで、特性に合わせた支援方法も考えることができます。

以下では、症状別に記憶の認知特性の傾向と支援方法を紹介します。


①読み書き障害

読み書き障害は「文字を読めない」という症状であり、LD(学習障害)の中でも8割近くを占めると言われています。

そして、記憶の特性としては、

「言語的短期記憶と言語性ワーキングメモリが苦手」
「視空間的短期記憶と視空間性ワーキングメモリは平均以上」

というものになります。


言語性短期記憶は、幼児期にひらがな・カタカナなどの文字を獲得する際に重要となり、初期の語彙力の形成にも関わっています。よって、ここが苦手なことでひらがな・カタカナの獲得が遅れたり、音読が苦手になったりします。

また言語性ワーキングメモリは、文章の読解に大きく影響していると言われており、この力が低いために文章読解の困難さが生まれてしまうと言われています。

そのため、2つの言語性記憶の力の困難が「文字を読めない」という症状に繋がっていると言われています。


よって学習支援としては、短期記憶の低さを補いながら、ひらがな・カタカナなど文字を音声情報を繋げていく作業が必要となります。例えば、

▶︎ 絵本の読み聞かせ
▶︎ 音読
▶︎ 詩の暗唱

などの言語と文字の一致していく活動が有効と言われています。


②書字障害

書字障害は、「文字は読めるけど、書くことができない」という症状です。

傾向としては、読み書き障害とは反対に、

「言語的短期記憶と言語性ワーキングメモリが低い」
「視空間的短期記憶と視空間性ワーキングメモリが低い」

という傾向があります。

言語性の記憶の力は平均以上のため、文字・文章を読むことは問題ありません。一方、視覚的な記憶の力が低いという傾向があるので、目から入った情報の処理が苦手で体をそれに合わせて動かすことが苦手になります。

つまり、ノートに鉛筆で文字を書こうとしても思った通りに鉛筆を動かせず文字を書けない、不器用さのために書字の困難が生まれます。


よって、支援としては、

▶︎ 三角鉛筆の使用
▶︎ なぞり書き、迷路など運筆練習
▶︎ ICT機器のタイピングで代替

など視空間能力の低さ、不器用さを補う支援が必要となります


③算数障害

算数障害は、「算数の計算(暗算・筆算)と推論(算数の文章題)が苦手」という症状です。

傾向としては、

「言語性ワーキングメモリと視空間的ワーキングメモリが低い」
「言語的短期記憶と視空間的短期記憶は平均以上」

という傾向があります。

視空間性ワーキングメモリは、脳内で数字を操作して行う暗算や筆算の位を揃えたりするときに使用するため、算数の苦手さにつながると言われます。

また、言語性ワーキングメモリは、算数の文章題の内容を理解・立式する時に使われるため、この力に困難があると「算数の文章題が解けない」という状態が見られやすくなります。


よって、支援としては「ワーキングメモリの低さ」を補いながら教えていくことが必要となります。例えば、

▶︎ 数字と具体物を一致させる視覚支援
▶︎ 算数・数学の文章題を視覚化して教える

などの支援が必要となります。


最後に

上記で紹介した傾向は、あくまで大きく分けた場合の話であり、現場では3つの症状が複合したり、困難さの度合いにも大きく差があります。

よって、傾向を知った上で、目の前の子に合わせた支援を考えていく必要があります。ぜひ、子どもの特性にあった教え方ができる支援者を目指していきましょう!

次回は、その他発達障害と記憶の特性について紹介していきます(^ ^)

参考:湯澤美紀,河村暁,湯澤正通(2013)
『ワーキングメモリと特別な支援』

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