発達障害とワーキングメモリの関係性② 〜発達障害と記憶の力の傾向は?〜

発達障害と記憶の関係

前回のブログでは、「学習障害と記憶の認知特性の傾向」について紹介しました。

前回は学習障害に限定した内容でしたが、今回はそのほかの発達障害、

▶︎ ASD(自閉症スペクトラム)
▶︎ ADHD(注意欠如多動症)
▶︎
DCD(発達性協調運動症)

の3つを取り上げて、記憶の認知特性の傾向を紹介します(^ ^)

発達障害と記憶の傾向

以下では発達障害の症状別に記憶の傾向を紹介します。

先に押さえておきますが、以下はあくまで傾向であり、実際の現場では症状の軽重も異なり、合併しているケースも多いです。そのため、厳密に適応するのではなく、目の前の子供・当事者の方々の実態に合わせて考えてください(^ ^)


①ASD(自閉症スペクトラム)

ASD(自閉症スペクトラム)は「社会性の困難・こだわり行動」の2つの症状を持ちます。しかし、ASDの認知特性は様々な現れ方をしており、記憶の認知傾向もバラバラであると言われます。

その中で、唯一ASDの人には「言語性の短期記憶が低い人が多い」という傾向が報告されています。
 そのため、
・話しかけてもすぐに反応できない
・興味のない語彙を覚えることが苦手
・国語の文章題苦手

などの行動が多いようです。

反対に、ASDの人の中には、
・何年も前のことを鮮明に思い出せる
・相手の言葉を正確に思い出せる

という優れた記憶力を持つ方もいます。

これは同時に、昔のことをよく覚えているため、
・嫌な記憶も鮮明に覚えている
・嫌な記憶が、フラッシュバックとして蘇りパニックになる
・トラブルになった相手のことを許せない

などの行動の課題につながるケースがあります。

ただし、ASDの人に誰でも当てはまるわけでなく、記憶の課題が少ない当事者もいるため「はっきりとした傾向はない」と認識をしておくことが必要なようです。


②ADHD(注意欠如多動症)

ADHD(注意欠如多動症)は、「不注意・多動性・衝動性」という3つの症状からなる注意力の困難を持つ症状と言われます。

記憶の傾向としては、
「言語性・視空間性両方のワーキングメモリが低い」
という報告がされています。

例えば、
・先生に指示されたことをすぐに忘れる
・片付ける段取り(視空間イメージ)ができず、お片付けが進まない
・国語や算数の文章問題(言語性情報)の時に、読んでも内容をすぐに忘れてしまい読解が苦手になる

などの不注意症状につながる。

あるいは、
・やるべきことを忘れて、目の前の出来事に反応してしまう
という多動性の原因にもなると言われます。

また、ワーキングメモリが低いと脳内で今後の出来事を見通すことが苦手になるので、
・「◯時までに〜する」
・「◯分で終わらせる」

などの時間感覚の困難にもつながります。

このような記憶の傾向があるため支援としては、

▶︎ 聞いたこと見たことはメモ(ボイスレコーダー)などに残す
▶︎ やることは書き出して優先順位で並び替えて視覚化する
▶︎ スマホでアラーム設定して作業時間をはっきりさせる
▶︎ 隣の人、同僚に時間になったら声をかけてもらう
▶︎ 一人で作業をしないで一緒に行ない、進めてもらう

など記憶の外部化周りの人に助けてもらう(ピアサポート)ことが大切な支援になります。

③DCD(発達性協調運動症)

DCD(発達性協調運動症)は、「運動機能に困難があり、不器用さがある」という症状です。

傾向としては、視空間性短期記憶、視空間的ワーキングメモリが共に低い」
という傾向があります。

視空間性の短期記憶・ワーキングメモリが低いと、視覚情報を下に体を動かすことが難しくなるため、
・ボールをうまくキャッチできない
・バットがボールに当たらない
・思った場所に鉛筆で文字を書けない

などの粗大運動、微細運動の不器用さとして現れることが多くなります。

また、記憶の傾向をみて気づいた方もいるかもしれませんが、「視空間性の短期記憶、ワーキングメモリが低い」という特徴は「書字障害」を抱える人にも当てはまる傾向です。

つまり、DCDの不器用さを抱えると、そのまま書字(運筆)能力の困難にもつながるため、書字障害の症状も持ってしまう、ということです。

よって、支援として視空間性短期記憶と視空間的ワーキングメモリを使う運動を遊びながら行い、目と手・体の協応性を高めていくことが必要になります。

例えば、
▶︎ 風船バレー、 紙風船などで遊ぶ(粗大運動の支援)
▶︎ ハサミ工作、お絵描き、模写(微細運動支援)
▶︎ ICT機器の活用(書字の不器用さの支援)
などが有効となります。


最後に

前回の記事と合わせて、発達障害の症状を「記憶」という視点から紹介していきました。

発達障害の特性を知っても、支援を考えるためには記憶をはじめとした様々な視点の知識も必要となります。ぜひ様々な視点からアセスメントと具体的支援を考えていきましょう!

以上、参考になれば幸いです(^ ^)

参考:湯澤美紀,河村暁,湯澤正通(2013)
『ワーキングメモリと特別な支援』

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