凸凹マップ!第5回【後編】発達障害体験談〜東京で療育、発達支援の実態〜

シリーズ「凸凹マップ!」について

シリーズ「凸凹(でこぼこ)マップ!」は、発達障害当事者の人たちの体験談をまとめた連載です。

発達障害は(でこ…得意な部分)と(ぼこ…苦手な部分)の差が大きい障がいと言われています。
詳しくは発達障害とは何か? 〜法律に基づく3つの特徴〜をご覧ください。

こうした発達障害について、まだまだ世の中には認知されていない現状があります。目には見えづらい障害だからこそ、なかなか周囲に辛さを分かってもらえず、苦しい思いをしている当事者の人たちが多く存在しています。

シリーズ「凸凹マップ!」は、そうした人たちの手助けをするために執筆しました。この連載が、発達障害で悩む当事者、保護者、支援者の人たちの、障害を理解するヒントになれば幸いです。

前編のふりかえり

前編はこちら

ぽぽこさん

  • 女性
  • お子さんがADHD(注意欠陥・多動性障害)当事者
  • 公的機関のほか、複数の民間療育施設を利用中

前編では、ぽぽこさんのお子さんが受けている療育について詳しく伺いました。

厚生労働省は2019年10月から就学前障害児の発達支援の無償化をすすめており、専門家による療育がほぼ無料で受けられる施設が増えているそうです。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。

療育にご興味のある方は、一度自治体の子供家庭支援センターへ相談してみてはいかがでしょうか。実際に足を運ぶことで多くの情報が手に入るようです。

後編では、就学を控えたぽぽこさんのお子さんが、どのような療育を受けていくか、ぽぽこさんのお考えを伺いました。

発達障害体験談

就学すると療育施設には通えなくなる

多くの療育施設を比較され、相性のいい施設に巡り会えたぽぽこさんとお子さん。
しかし就学したら、今までの施設には通えなくなってしまうそうです。

もうすぐ子どもは就学するので、年齢的に今までの療育施設には通えなくなってしまうんです……

え!?
就学後は通えないんですか!?

就学前の子ども向けの療育施設(児童発達支援)だと、就学後は通えなくなってしまうんです。
就学後は「放課後等デイサービス」というくくりになるようですね。
就学後も切れ目なく、継続して通える施設は少ない印象です。

せっかく相性のいい療育に巡り会えても、わずかな期間で次を探さないといけないんですか……

幼児期から学齢期、思春期までの成長を通して長く通える施設が無いんですよね……
特に私の住んでいる区には、放課後等デイサービスが少ないので、就学すると選択肢が一気に減ってしまいます。

就学を控えた現在、ぽぽこさんとお子さんは放課後等デイサービスをいくつも見学しているそうです。

療育の効果は?

さまざまな療育を受けてみて、いい影響はありましたか?

効果があったと感じます。「話を聞く」ことができてきたので、衝動性や多動性は減ってきている印象です。
感情のコントロールにはまだ難があるようで、「1番になりたい」「勝ちたい」欲求が優先することも多いので、人との関わり方や相手の立場で考えることなどは今後の課題ですね。

子どもも何年かしたら思春期を迎えます。ですので自分の居場所を見つけられるよう、本人ともよく相談して決めたいですね。
長い目で見て、本人ひとりで通える施設を選んでいくつもりです。

療育を受ける時に用意すべき情報

療育を検討されている保護者の方に共有したい情報はありますか?

予め日記を取っておくことをオススメしたいです!
本当に細かなことでも、メモ書きでもいいので!
子どもの発達障害が疑われた時、施設やクリニックで問診票を書くことになるのですが、これがものすごく細かいことを聞かれる内容なんですね。しかも同じ内容を、何度も何度も聞かれたりします。

細かいといいますと……

「バイバイは何ヶ月からできましたか?」とか、
「目が合うようになったのはいつ頃ですか?」とか、
日頃からよく観察していないとパッと答えられないような細かい質問ですね。母子手帳の項目よりももっと細かくて、かなり書くのに苦労しました。

いきなり聞かれても答えられないですよね!?
確かに、予め記録しておいた方が良さそうです!

一生そばにいるのは保護者

ぽぽこさん、とても積極的に情報収集されていますよね。

確かに専門家の方が特性や障害については詳しいと思うのですが、
私は「様子見」という言葉を信じないようにしてきました。
様子を見た後も子どもと過ごすのは保護者ですから……

※ぽぽこさんは、お子さんが3歳を過ぎたころ、発達障害を疑い、子供支援センターに相談に行っています。その際、センターの方には「お子さんのIQは高いので様子を見ましょう」とすすめられましたが、それでも強く希望して支援を申請した経緯があります。詳しくは前編をご覧ください。

確かに……!
「様子見」せずに行動を起こした結果、今があると。

私もまだまだ詳しくはないので、日々勉強しています。ここ2年ほどはセミナーに行ったり、本を読んだり……
子どもをきっかけに発達障害に出会ったのも、何かの縁だと思っています。

第一に、子どもの事を理解したかったんですね。
多くの支援を受けましたが、制度や専門家の方の言葉を理解するにも知識が必要です。
当時私は療育手帳と受給者証の違いも知らなかったんです。発達障害について勉強してみて、そうした話を理解する素地が少しできたのかな、と思います。

障害というフィルターを通さずに我が子と向き合いたい

日々勉強なんですね……頭が下がる思いです。

ただ、勉強するとどうしても頭でっかちになってしまう面もあるんです。
まるで答え合わせをするように「やっぱりADHDだからこんな行動するんだ」とか、特性から先に子どもを見てしまうこともありました。
ここ最近は、知識に引っ張られ過ぎたな……と反省しています。

今は障害というフィルターを抜きにして、1人の人間として子どもと向き合い、子育てを楽しんでいます。

ある程度の知識はもちろん必要だけれど、その子自身を観る力も必要なんですね。

全体のまとめ

第5回は就学前の療育について、保護者のぽぽこさんから詳しいお話を伺いました。

積極的に情報収集をしていくこと、時には自ら支援を申し出る必要もあること、
そして発達障害の知識に引っ張られず、子ども自身を観ること……

保護者のみならず、教育者の方達にも大切な姿勢だと感じました。

今回も、学び多き取材となりました。
引き続き、当事者の方に話を伺っていきます。

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