シリーズ「凸凹マップ!」について
シリーズ「凸凹(でこぼこ)マップ!」は、発達障害当事者の人たちの体験談をまとめた連載です。
発達障害は凸(でこ…得意な部分)と凹(ぼこ…苦手な部分)の差が大きい障がいと言われています。
詳しくは発達障害とは何か? 〜法律に基づく3つの特徴〜をご覧ください。
こうした発達障害について、まだまだ世の中には認知されていない現状があります。目には見えづらい障害だからこそ、なかなか周囲に辛さを分かってもらえず、苦しい思いをしている当事者の人たちが多く存在しています。
シリーズ「凸凹マップ!」は、そうした人たちの手助けをするために執筆しました。この連載が、発達障害で悩む当事者、保護者、支援者の人たちの、障害を理解するヒントになれば幸いです。
発達障害体験談
当事者ゆりかさんのプロフィール

ゆりかさん
- 女性
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)当事者
- お子さんはADHD、ASD(自閉症スペクトラム)当事者
- 事務職(一般就労)
ADHDの症状について
まず、ゆりかさんの発達障害について、ざっくりとお聞かせください。
ADHDの診断を受けているそうですが、どのような症状でお困りでしょうか?
ざっくりお伝えすると、大きくふたつですね。
ミスが多いことと、
周りの人とソツなくやっていくことが難しいこと。
このため、できる職種が限られていると感じています。
ふむふむ……
お仕事について、後ほど詳しく伺いたいです!
「性格めっちゃいいけど、めっちゃ悪いやつの時もあるよね」
ゆりかさんの子ども時代のご経験を振り返って教えてください。
小学生時代のことをお話ししますね。
私自身の困り感は、なかったように思います。
遊べる友人もいましたし、
勉強面では、成績も高い方でした。
ただ……
周囲を困らせてしまった経験は、たびたびありました。
今にして思うと、これはADHDの特性だったように感じます。
ふむふむ……
例えばどういったことでしょうか?
小学3年生の時、友人に「ゆりかは性格めっちゃいいけど、めっちゃ悪いやつの時もあるよね」と言われました。
クラスメイトの笑いをとってウケようとする明るい面と、
自分のわがままを通そうとする面と……
「仲良くなるためには、周りにウケないといけない」という思いが、特に小学生時代は強かった……と、ゆりかさんは振り返ります。
「使命感のような衝動」でイタズラを繰り返す
あと、すごいイタズラをしてしまったことがあるんです。
えっ!どんなことですか?
理科の実験で、隣のクラスが泥団子を作ったんです。
乾燥させるために、泥団子は理科室に
クラス全員分、並べておいてあったのですが……
ひとつ残らず、踏み潰してしまいました。
ええー!!
なぜそんなことを!?
自分でも上手く説明できないのです。
やってはいけないことだと、頭では理解しているんです。
それでも、理科室の前を通りがかって、並んでいる泥団子を見た時、どうしても抑えられない衝動が湧き上がってしまって……
身体が飛び出してしまったと……
はい。
実験で使う泥団子を踏み潰してダメにし、
隣のクラスには大変な迷惑をかけてしまいました。
皆の前で謝罪もしました。
その時は本当に反省して、もう絶対にするまいと思っていたのに……
また同じことをやってしまったんです。
えええ……!!
理科室の前を通りがかったら、また衝動を抑えられなくなり、踏み潰してしまいました。
使命感のように強い衝動があって……
なるほど、理性ではとても抑えられない衝動……
大騒ぎになったでしょうね……
中学に入学 英語や数学は暗号の羅列に見えた
学生時代に、他にお困りだったことはありましたか?
さっきお伝えしたようなことで迷惑はかけましたが、
小学生ぐらいまでは勉強面でも、交友面でも大丈夫でした。
勉強で困り出したのは、中学に入ってからですね。
英語と数学が本当に苦手でした。
問題文を読んでみても、
目が滑るというか、暗号の羅列に見えてしまって。
英語と数学は、どちらも主要教科ですよね。
周囲の反応や、援助はいかがでしたか?
正直なところ、何が分からないのかすら分からず、
ヘルプの出しようがなかったんです。
塾に通って、2対1の個別で教えてもらっていたんですが、
どうにも伸びなかったですね。
努力されても、難しかったんですね。
あ!でも、他の教科は割と大丈夫でした。
国語、理科、社会はこなせてましたね。
主要教科ではないですが、音楽は特に好きで得意でした。
ですから、そんなに辛くはなかったですね。
得意な教科や、好きな教科が他にたくさんあったんですね。
前編まとめ
明るく、朗らかな笑顔が印象的なゆりかさん。大変だった思い出も、軽快な語り口で振り返っていらっしゃいました。
後半では、ゆりかさんが就労されてからの体験談を綴ります。
高校生の時からさまざまな場所で働き、
自分の向き、不向きを体験していくゆりかさん。
今はコロナ禍で在宅勤務をしているそうです。その実態や、就労の工夫について伺います。