ASD(自閉症スペクトラム)の子に伝わる4つの指示の出し方

ASD

指示が伝わりにくい?

自閉症スペクトラム(=以下ASD)を抱える子は、

▶︎ 社会性の困難
▶︎ こだわり行動(感覚の困難を含む)

と言う特性があります。(DSM-5による)また、それ以外にも様々な特性をもっているケースが多く、0〜100まで連続しているというイメージで「スペクトラム(=連続体)」の言葉が使われています。


「社会性の困難」と言う言葉は、周囲の大人一方的な見方であり、賛否両論ではありますが、支援者の立場では「指示が通りづらくて困ってしまう」という一面は確かにあります。


今回は、そのようなASDの子にも伝わりやすい指示の出し方を紹介します(^ ^)


伝わりやすい4つの指示

学校のような集団で動く場面では、多くの子どもは大人の声かけが少々雑でも、雰囲気で動けます。
しかし、ASDの子は反応が遅れてしまったり、どうすればいいかわからず止まることが多いので、先生は「この子だけ聞いてなかった」と受け取り、結果、ASDの子だけ叱られてしまう、という現象も起きてしまいます。


 よって、ASDの子にも伝わりやすい指示ができれば、それは集団全体へ指示を出すときも効果的な声のかけ方になります。
以下で、声の掛け方の4つのポイントを紹介します。


① 理由+代替行動

1つ目は、「理由+代替行動」で伝えるです。社会性の困難があるASDの子は「立場の違いを認識するのが苦手」という子は多いです。

 例えば、

▶︎ 親だから
▶︎ 先生だから
▶︎ 年上だから

などの「立場が上」という理由で行動することは、感覚的に理解しづらいので動いてくれないことが多いです。
よって、「なぜ、この行動をする必要があるのか?」という理由をしっかり伝えてから、指示をすることが大切です。


 さらに、「〜しません」「〜はダメです」のような、否定禁止系の指示も伝わりにくいです。例えば、廊下を走っている子に「走ってはいけません!」と声をかけても、「走らない・・・スキップ?早歩き?匍匐前進?」と、否定語で伝えると、どんどん発想の解釈を広げてしまいます。

 よって、「危ないです。歩きましょう。」のように、「理由+代替行為」のセットで伝えることで、変な誤解をすることなく、スムーズに伝えることができます。


② 短く伝える

2つ目は「短く伝える」です。

 当然ですが指示は長いほど伝わりにくいです。特に言語力に困難さを持つことが多いASDの子には、なるべく短い言葉で伝えてあげましょう。極端に言えば、単語のみで言えば伝わりやすいです。
これは、外国で生活しても単語だけで意外と意思疎通ができたというエピソードが多いことからもわかるかと思います。

 ただし、そこまで極端にするのは難しいので、余計な単語を減らしたり、助詞や語尾に気をつけるといいかと思います。


 例えば、1年生のひらがなの学習で、教師が「いるかの『い』をノートに書けるかな〜」と指示を出すと、子どもたちは元気いっぱいに「いるかのい」とノート書いていたり、あるいは指示だと気づかないで、ずっと先生の言葉を待っていた、というエピソードがあります。


 子どもたちは言われた通りに動いているだけですが、大人の指示が曖昧ですと、伝えたいことが伝わらなくなっていきます。
 このようなケースでは、例えば不要な単語や助詞、語尾はなるべく省いて、「『い』を書きます」だけで、十分と言えます。これはASDの人だけでなく、全ての子どもにもわかりやすい伝え方になります。

さらに言えば、

▶︎ 指差し
▶︎ 手で示す
▶︎ 目線

など言葉を使わずジェスチャーで伝えられると、ざわざわとした余計な音がなくなるので、最も伝わりやすくなりますので、チャレンジしてみると良いかと思います。


③ 対象を明確にする

3つ目は、「対象を明確にする」です。

 子どもは意外と先生の言葉が自分に言われていると気づいてないケースが多いです。

 例えば、授業中にざわざわして集中していない時に、どのように声をかけるでしょう?この時に「静かに!」と声をかけても、なかなか静かにならない、というケースは多いです。考えれば当然ですが、話すというのは、1vs1で行われるものなので、先生vs30人という状況で、先生の言葉が自分に向けられている、とはなかなか認識できないのです。

そのような時は、「誰に伝えているかを明確して伝える」ということが重要です。例えば、授業中ざわざわしている時は、「今、喋っている人は静かにしなさい」と言えば、より伝わりやすいので、静かになります。



さらに①の「理由+代替行動」を加えると、「喋っている人、今はAさんの発表中です。Aさんにおへそを向けなさい。」と言えば、より動きやすくなります。


このように、対象を意識した伝え方で子どもに伝わりやすくなりますし、先生が大声を出して喉を潰すこともなくなります(^ ^)



④ 数字を使う

4つ目は、「数字を使う」です。

 例えば、玩具箱を散らかして遊んだ子に「おもちゃ片付けなさい」と言うと、おもちゃを1つだけ片付けて終わろうとする子がいます。子どもとしては「片付けたじゃん!」という主張ですが、大人は最後まで片付けることを期待していますので、ここで認識のズレが起きてしまいます。


 そこで、「おもちゃを10個拾って、箱に入れましょう。」と指示すれば、素直に10個拾ってくれます。(実数より多めに言うと効果的)

 このように、数字は大人、子どもなど立場に関係なく、言葉の解釈がぶれないので、言語に苦手さのあるASDの子にも伝わりやすいのです。

最後に

今回は指示のポイントについて紹介しました。

ただし指示をするときに大切なことは、「指示がなくても動けるようになること」とも言えます。
よって、最初に伝わりやすい言葉で指示し、やり方を教える、そしてできるようになったら、「どうするんだったかな?」「やってごらん」と自分でやることを促して行動を定着に導くことが大切です。

そのための最初のステップとして、指示の工夫をしてみてはいかがでしょうか?

以上、参考になれば幸いです(^ ^)


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