時間を守るのが苦手な子への対応

「うちの子、時間が守れなくて困っています。」

そんな質問をいただくことが度々あります。

  • 「早くしなさい!」
  • 「〇時に出発って言ったよね!」
  • 「もうおいていくからね!」

言いたくないけど、ついつい言ってしまいますよね。 お子さんが時間を守れない原因は一体何でしょう?

4つのパターンを考えてみましょう。


1.「時計が読めない。」

時計の学習は小学校低学年で行います。

単純に時計が読めないだけでしたら、学習した後、生活の中で少しずつ 身に付いていきます。5年生の移動教室で5分前行動ができていない、と注意され、6年生の宿泊教室で5分前 行動ができるようになった、と褒められるのは鉄板の流れです。

それらの流れより明らかに遅れているな、とい う場合は SLD や2以降の原因を疑う必要があるかもしれません。


2.「時計は読めるが、時間の感覚が曖昧。」

時計が読めることと、時計を見て次の動きの見通しをもてることは別物です。

▶「着替えに5分くらいかかるから、そろそろ着替えたほうがいいな」                   
▶︎ 「片付けに10分くらいかかるから、10時になったら終わりにした方がいいな」

などと、次にとる行動の時間を「逆算して動く(見通しをもつ)」というのは、とてもレベルの高いことです。そんな場合は、前もって具体的に声を掛けてあげる事が効果的です。

例えば、

▶「着替えに5分くらいかかるから、9時55分(長い針が11)になったら着替え始めてね!」と説明する             
▶「片付けに10分くらいかかるから、9時50分(長い針が10)になったら片付け始めてね!」 と声を掛ける
▶「着替え初めまであと5分だよ」

などと、約束の時間前に時計を意識させる言葉掛けも大切です。 時計をこまめに見ながら生活する、というのは、小学校高学年くらいで少しずつできてきます。

また、少しレベルをあげて、自分で考えられるようになってほしいのであれば、

▶「着替えに何分くらいかかると思う?」
▶「じゃあ、何時に着替え始めたらいいと思う?」                              

などと、自分で考え、答えさせるような言葉掛けをするのも効果的です。 人に指示されることよりも、自分の言葉で決めた言葉の方が意識に残りやすいからです。

もしも、その見通しが的外れな場合(着替えに20分かかると答えるなど)は、やさしく訂正し、少しずつ時間 感覚を植え付けてあげましょう。


3.「約束の時間を忘れてしまう。」

これは、ADHD 傾向のお子さん、あるいは、ワーキングメモリが低めのお子さんに見られやすい特徴です。

単純に約束の時間を忘れてしまう、あるいは、約束したこと自体を忘れてしまうパターンです。これは、わざと 忘れようとしているわけではないし、気を付けようと思っていても忘れてしまう、「お子さんの苦手なこと」で す。本人は頑張っているつもりなのに怒られてしまいがちなので、自己肯定感の低下を引き起こしかねません。

「約束したでしょ!」「なんですぐ忘れるの!」

などの言葉は気を付けないといけませんね。

もし、この傾向があるのであれば、合理的な配慮が必要です。 皆さんは、絶対に忘れられない用事があるときは、忘れないためにどうしますか?? 一つは、メモ、もう一つは他者に聞くの二つが真っ先に思い浮かぶと思います。 その二つを少しずつ身に付けさせてあげましょう。

「メモ」といってもその方法はたくさんです。

  • 付箋に書く
  • 手帳に書く
  • カレンダーに書く
  • スマホに打つ(アラーム機能も活用)
  • 手に書く etc. 

など、お子さんと環境に合わせた方法を用意して、自分でできるようにしてあげましょう。学校の先生などにも、 クラスで同じように対応してもらえるよう協力できると尚よいです。

また、「人に頼れる」というのも大切なスキルです。

  • 「10時になったら教えて!」
  • 「次何すればいいんだっけ?」
  • 「私忘れやすいから、時間になったら教えて」

など、自然とできる子もいれば、そうでない子もいるので、練習して身に付けさせてあげたいスキルです。



4.「一つのことに夢中になって忘れてしまう。」

これは、ASD 傾向、ADHD 傾向、こだわりが強い傾向のお子さんによく見られます。

一つのことに集中しすぎ て時間になっても気付かない、いわゆる「過集中」になってしまうことがあります。こだわりが見られやすいた め、集中しているときに、「もうやめなさい」と突然言われると、イライラしたり、パニックになったりしてしま うことがあります。

対策としては、2や3のように、事前に先の見通しを確認しておくこと(スケジューリング)や、他者にリマ インドしてもらうことが有効です。そして、普段から「途中でも声を掛けるからね」と本人と約束をしておくこ とがとても大切です。

過集中の傾向がある子は、途中で遮られることをとても嫌がります。可能なら、時間で区 切るのではなく、区切りのいいところで終わりにできるよう時間を調整してあげることが理想です。


終わりに

さて、お子さんの傾向は1~4のどれでしょうか。

この他にも時間を守れない原因はあるかもしれません。お子 さんの行動をよく観察し、その原因にあった対策を立ててあげることが、「早くしなさい!」を減らす一番の近道 です。

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