ワーキングメモリ支援を通して、子どものレジリエンスを高める方法① 〜なぜ発達障害を抱える子はレジリエンスが低いのか?〜

ワーキングメモリとレジリエンス

今日は「ワーキングメモリとレジリエンス」というテーマで紹介します。レジリエンスとワーキングメモリと、どちらも聞いたことがある人はいると思いますが、実はこの2つは深い関係にあります。

そして、レジリエンスの低い子にどう支援をしていくか?というテーマで紹介していきます。

ワーキングメモリとは?(※以下ワーキングメモリ=WM)

そもそもWMとは何か?というと、「目の前の情報を一次的に頭の中に覚えて作業に使う力」のことを言います。例えば、子どもが

「スーパーで、6枚切りの食パンと、牛乳と、にんじんと、コーンポタージュ買ってきて。余ったお金でおやつ買っても良いわよ。」

と言われました。

そして子どもはスーパーに向かう間に、

「6枚食パン、牛乳、人参、コンポ、余ったらおやつ」

と、頭の中で唱えながら覚えておこうとする。この覚えておこうという力がWMです。

また、途中で犬に出会って「かわいい!」と喜んで気をそらされてしまうかもしれません。しかし、頭の中には一時的に保存されているので、

「なんだっけ?・・・そうだ、6枚食パン、牛乳・・・」

と唱え始めることができます。このような、一瞬気をそらしても、頭の中には保存しておく力もWMの力です。

このWMが高いと、学力が高い、メンタルが強くうつ病や依存症になりにくい、など様々な効果があり、生きる上で重要な力と言われます。(Tracy Alloway,2013)

レジリエンスとは?

一方レジリエンスとは、

  • 「困難を乗り越える力」
  • 「失敗しても乗り越えることができる!」

という感覚を言います。

心理学用語であり、脳科学者の方の中には曖昧な概念と疑う人もいたりしますが、一般的には生きる上でとても大切な力だと言われています。

このレジリエンスは、様々な要素から成り立っているのですが、実はWMの力をかなり必要とします。よって、発達に困難がある子(特にWMが低い子)には身につきにくいと言われます。

なぜ失敗しやすい?

そもそも、なぜWMが低いとレジリエンスが身につきにくいのでしょうか?これは、WMが思考力、判断力など「頭の回転」に大きく関わるからです。

①レジリエンスが高まる仕組み

通常、困難を前にすると人は、

  • 「過去の経験からどのような困難か明確化する」(記憶)
  • 「何をすればいいか考える」(思考・判断)
  • 「どういう手順でやるか考える」(プランニング)

というステップを踏みます。こうして、困難に対しての行動が明確化することで「何をすればいいか見通しが持てる」という状態になり、「なんとかなる!」というレジリエンスが発揮されるのです。

そして、成功体験を積むと「困難があってもなんとかなる!」と自分を信じられるようになります。また、一度失敗しても「やっぱり、こうすればよかった」と別の方法をとることができます。これらの力によって、「失敗を乗り越える力」「困難に立ち向かう力」というレジリエンスが育てられます。

そしてWMですが、具体的には以下のような「考える→実行」までのプロセスに関わっています。

  • 一時的に保存(記憶、思考力・判断力)
  • 優先順位を考える(計画性)
  • 実行する

よって、先ほどのレジリエンスを高める行動の大部分で使われる力になります。だから、WMが低い子は、レジリエンスも高まりにくくなってしまうのです。


②認知負荷の視点

もう少し脳科学的な側面から説明すると、WMは「過去の記憶を使って情報を処理する力」になります。

例えば、国語の文章題を解く時は、

「文章を読む」→「読解する」

というステップを刻みます。

この時に、例えば、文章題に慣れた人は100の能力のうち、

文章を読む:40
読解する :60

という具合で処理して、60の読解の力を使って問題を解いていきます。

一方、WMが低く50しかない子は、

文章を読む:40
読解する :10

ということになり、読解に10しか力をかけることができません。


よって、頭がパンクして諦めてしまうのです。 

他にも、LD(学習障害)を抱えている子は、「文章を読む」という力に課題があります。

よって、100の力を持っていても、

文章を読む:80
読解する :20

というように、読むことに対する負荷が大きくなります。

その結果、読解にかける力が減ってしまうのです。この脳の処理にどれだけ負荷がかかっているかを、「認知負荷」と言います。「文章を読む力」を高める練習(読み聞かせ、音読等)にはWMを使うので、LDの子はWMが低い子も多いです。

このように、WMが低い子は文章題が苦手な子が多く、またそのほか様々な情報処理の力に影響します。よって、ADHDやLD、その他困難のある子を見る時は、WMを軸とした「認知負荷」の視点をもって支援をすることが大切です。


最後に

生まれつきの特性によって「できない」ことを、

頑張って読んで!
何度も繰り返せばできるから!

という根性論で支援を行ってしまうと、子どもたちは

「どうすればいいかわかんない・・・」
「何度やってもできない・・・」
「どうせやってもできないんだ・・・」

とレジリエンスを下げてしまいます。

よって、支援者は子どもたちの得意、不得意(特にWM)を把握して、具体的にできる方法を教えていくことが大切です。

 次回の記事では、WMが低い子に、どう支援をしていくのか具体的な方法を紹介していきます。ぜひお読みください!(^ ^)


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