ICT機器の活用は、本当に子どもの学力を伸ばすのか?
こんにちは!こども発達支援研究会です!
本日のテーマは「ICT機器の活用は、本当に子どもの学力を伸ばすのか?〜PISA調査の報告結果を特別支援教育の視点から考える〜」です。
近年、教育分野にICT機器の活用が進められています。これは、困難のある子の学習支援や生活の質を高めるために、大きな力となると言われています。
しかし、人々の思いとは裏腹になかなか環境整備は進まず、モヤモヤを感じている人が増えています。また、香川でゲーム禁止条例が制定されるなど、ICT機器そのものが本当に子どもの成長に貢献するのか疑問視する人は、一定数存在することが明らかになりました。
今回は、「ICT機器は本当に子どもの学力を伸ばすのか?」というテーマで紹介していきます。
【PISA(2015)の調査】
OECD(経済協力開発機構:民主主義を原則とする36カ国の先進国が集まる国際機関)が、3年に一度行っているPISA(世界共通で行われる生徒の学習到達調査)では、デジタルリテラシーに関する調査を行っています。
そこでは、学校での
- PCの使用頻度(デジタルリテラシー)
- 学力(科学的リテラシーと数学的リテラシー)
の関係性を調査、報告しています。
これはもちろん教育現場における、ICT機器の有効性を調査するためです。
【学校でPCを頻繁に使う子の学力は落ちた】
OECDは調査結果を毎年HP上で公開していますので、こちらを紹介します。

(参考:http://dx.doi.org/10.1787/888933253280)

データと調査結果によると以下の報告があります。
- PCを学校で適度に利用する生徒は、ほとんど使わない生徒より成績がやや良い
- 頻繁に利用する生徒は、ほぼ成績が悪化する(背景要因を除いている)
この結果から、
- 教育のためにICT機器に投資した国は、生徒の成績はあまり改善されていない
- 恵まれた生徒の恵まれない生徒の学力格差の解消にほぼ役に立っていない
という報告がされています。
【原因の推測】
期待とは裏腹なこの原因について、OECD教育・スキル局長である、アンドレアス・シュライヒャー氏は、以下のように紹介しています。
- 概念的な理解や高次の思考スキルは、教員と生徒の緊密なやりとりが必要だが、ICT機器の拡大はそのような人間の関わりを阻害していると予想される。
- 19世紀の学校組織による、20世紀の教育実践に、21世紀の技術を単に上乗せただけでは、ICTを生かした教育実践は実現できないのかもしれない
- ICT機器だけでなく、それを扱う学校組織と教員の質を変化させなければ、効果は望めない
このように、教育の本質とは何か?そして、現在の学校制度などにも要因は予測されていますが、全体的な流れとしては、ICT機器の活用で教育を進めるのはなかなか難しいようです。
【困難がある子への支援】
上記の報告は、世界規模の調査での報告でしたので衝撃もありました。その一方で、「人との関わりの中での学びの価値」を再認識させたとも言えます。
特に、支援が必要な子ほど、PCやゲームを能動的に行う傾向があり、本来の成長を阻害することは報告されています。
またOECDレポートでは、非認知スキルを高める幼児期の教育の重要性が報告されていますが、低年齢のICT機器の活用ほど、依存性を高め、幼児期の本来必要とさせる成長時間を減少させることにもなります。
本来、人は人間同士の関わりの中で成長していきます。ICT機器を人間の関わりと別で考えてしまうと、子どもの成長にはつながらないのかもしれません。
むしろ、人間同士の関わりを加速させるためにICT機器を活用するなどの教育実践が、今後はクローズアップされていく可能性も考えられます。
最後に
もちろん、ICT機器は効果的に使えば優秀な教育ツールですので、目の前の子どもに合わせた使い方を大人が調整することが大切になります。
ただ自主性に任せるだけでなく、大人も考えて取り入れることが大切になりそうですね。
以上です!参考になれば幸いです(^ ^)