いよいよ今年も残すところあとわずかとなりました。2022年はどんな年でしたでしょうか。そして、2023年はどんな年にしようと思っているでしょうか。
お忙しい毎日を過ごしてきた方々は、お正月でほっと一息つけるといいですね。
さて、お正月といえば、こま、羽根つき、かるた、福笑いなど、昔からある伝統的な遊びがたくさんあります。
テレビゲームなどが普及してきた現代。いわゆる昔遊びと呼ばれる、アナログな遊びに触れる機会が減ってきています。今回は、そんな昔遊びを感覚統合の視点から考えてみたいと思います。
●感覚統合とは
感覚統合とは、生活の中で感じる様々な刺激(感覚)を、脳で整理(統合)する働きです。
人間の感覚には五感(触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚)に加え、
固有受容覚(手足の状態や筋肉の伸縮、関節の動きなどを感じる感覚)、
前庭覚(身体の傾きやスピードを感じる感覚)など他にも様々な感覚があります。
それぞれの感覚が捉えた刺激を脳で適切に整理、処理することで、
その場に応じた行動(用具の操作、身体の操作、状況把握、コミュニケーションなど)をとることができます。
感覚統合がうまくいかないと、
力加減が上手くできず相手に痛い思いをさせてしまう、
ボールの距離感が分からずうまくキャッチボールができない、
じっと座っていられずそわそわしてしまう、などの課題につながることがあります。
●感覚統合の視点から見た昔遊び
一方、昔遊びでは、
大きく身体を動かしたり、指先を細かく動かしたり、広い空間で目を動かしたりと、
さまざまな刺激が複合的に絡み合い、それらの刺激を脳が処理することにより、
感覚統合の力が養われやすいと考えられます。
いくつか例を見てみましょう。
(以下、【触】:触覚 【視】:視覚 【聴】:聴覚 【固】:固有受容覚 【前】:前庭覚)
- こま、ベーゴマ
こまは、ひもを巻く、投げる、操作する、という動きから成り立っています。
【ひもを巻く】
・手指の巧緻性(こうちせい)【触】【固】
・力の調整力【固】
【狙ったところに投げる】
・リズム感(こまを離したり、ひもを引いたりするタイミング)【固】
・平衡感覚(こまを水平に投げる)【前】
・距離感をつかむ力(狙ったところに投げる)【視】
【操作する】
・用具操作の力(ひもでこまを宙に浮かせるなど)【固】【前】
・空間把握の力(空中にこまを投げて掌に乗せるなど)【固】【前】
とくにベーゴマは、普通のこまに比べてひもを巻く時の力加減やよく回すための操作がとても難しいです。そんなベーゴマを毎日のようにやっていた時代、子供たちの感覚はとても磨かれていたのではないでしょうか。
- 羽根つき
羽根つきは、羽根を目で追う、落下地点に入る、羽子板で打つ、という動きから成り立っています。
【羽根を目で追う】
・眼球運動【視】
【落下地点に入る】
・空間把握の力(羽根との距離間、自分のいる位置の把握など)【視】【固】【前】
・平衡感覚(身体の傾き、羽根を見ながら身体を動かすなど)【固】【前】
【羽子板で打つ】
・用具操作の力(羽根に合わせて板を振る、板の角度など)【触】【固】
・力加減【触】【固】
2~3歳くらいの子供は、
ボールを高く投げるとボールを見失い、自分の目線の高さで周りをきょろきょろした後、落ちてきたボールを見つけて追いかけます。
首を動かして空を見上げ、目で追いながら身体を移動させる。画面の広さで眼球運動が限定されてしまうテレビゲームではなかなか身につかない動きですね。
- かるた
かるたは、読み上げを聞く、札を探す、札をとる、という動きから成り立っています。
【読み上げを聞く】
・集中して聞く力、記憶する力【聴】
【札を探す】
・眼球運動【視】
【札をとる】
・空間把握の力(札との距離感)【視】【前】
・思い通りに体を動かす力(札に向けて正確に手を出す)【固】
読み上げをよく聞いていないと札をとれないので、集中力も高まります。ことわざなどの語彙力向上にもつながりますね。
- 福笑い
福笑いは、配置を記憶する、パーツの向きを把握する、正しい場所に置く、という動きから成り立っています。
【配置を記憶する】
・見て記憶する力【視】
【パーツの向きを把握する】
・目隠しで触って向きを把握する力【触】
【正しい場所に置く】
・イメージした場所に置く力【固】
福笑いは大人でも正確に置くのは難しい遊びです。うまくできないからこそ面白い遊びでもありますけどね。
●終わりに
4つの昔遊びについて解説してきました。
実際には、家族や友達と遊ぶ中でしゃべったり関わったりしながら様々な情報を脳の中で処理するため、ここに挙げた以外の力も必要になってきます。
子供と遊ぶときに、「この遊びは感覚統合的に・・・」などと力説する必要はありませんが、
知識としてもっていると、昔からの遊びの良さや大切さが実感できるかもしれません。
体力低下が叫ばれている今、昔遊びの機会を作ってみてはいかがでしょうか?